「北朝鮮に出勤します 開城(ケソン)工業団地で働いた一年間」キム・ミンジュ著 岡 裕美 訳
新聞の書評欄で見つけ、図書館で予約して読んでみることにしました。本書は、南北経済協力事業で北朝鮮に造成された開城工業団地で、栄養士の修士号を持つ20代の韓国人が食堂の”店長”として働いた1年間が綴られたものです。
訳者のあとがきで、”ニュースで報じられる核やミサイルの話だけではない、北で暮らす「平凡な人々」のことを知る一助になればと願っている”とある通り、北の人々の日常や振る舞い、考えの断片を知ることができます。
”北の人はほとんどの場合、一人だけでいるときは純朴そうに笑いながら頭を下げてあいさつし、二人以上になると目を伏せて無表情で通り過ぎる。(中略)この体制の中で共和国の規定に背けば、南で想像できるような懲戒とは次元の異なる処罰が与えられるのだろう”とあり、エレベーターで韓国人である著者が乗っていれば、二人きりになるのを避けるため、一人では乗らないといいます。それでも、一人きりのときは”班長”に目をつけられないようこっそりと著者との会話を楽しむ。そして、皆総じて、北の女性たちは家族思いで南の人である著者のことも気遣う優しい純朴な人なのだそうです。
本書の状況は特殊なものだと思いますが、表面に見えるものとその裏側は必ずしも一致していないことを痛感しました。性格に表裏がないことは良いこととされていますが、世界にはそうせざるを得ない社会体制が存在しているのだなと。著者の実体験で得られた北の人との交流により感じた点がありのままの姿で描かれています。
現在、東京や京都などでは、たくさんの外国人観光客を見かけるようになりました。それでも、日本では身の回りに外国人がいることは日常的ではないと思います。私はこの春より、仕事上、外国人と協働する状況にあります。本書を通じて、それぞれの国の背景や過ごしてきた環境を理解し、受け入れ、尊重していきたいと思いました。また、相手を理解しようと思う姿勢は、言葉がうまく通じなくても伝わると感じています。英語を話せるように取り組むのと同時に、心の面でも解することができるようにしていきたいです。
