Marron_Creamのブログ

読書記録をメインに、お出かけなど日記風に書き連ねています

読書日記#118

『優しいあなたが不幸になりやすいのは自業自得なのだよ』

優しさと自己犠牲の境界線

 

強烈なタイトルに惹かれて

「優しいあなたが不幸になりやすいのは世界が悪いのではなく自業自得なのだよ」は、YouTubeで紹介されているのを見て知った本。何より目を引くのは、その強烈なタイトル。少し身構える言葉ではあるが、逆にどんな内容なのだろうと気になり、図書館で借りて読んでみました。

読み終えてまず思ったのは、「読んでよかった」という一言に尽きます。自分が「優しい人」なのかどうかは正直わからない。それでも、本書の言葉はところどころ鋭く胸に刺さりました。

 

「優しさ」と「自己犠牲」の違い

本書は、恋愛、家族、仕事、友人関係といったテーマごとに、「優しい」と言われがちな女性に向けて書かれています。

ただし、一般的な自己啓発本のような柔らかな励ましとは少し違う。むしろ、自分を犠牲にしてしまいがちな人の思考や行動を、かなり率直に指摘していく内容です。

自分を犠牲にすることで関係を保とうとする。しかしそれは本当に相手のためなのか。結果として、自分も相手も不幸にしていないか。

そうした問いが、飾らない言葉で投げかけられます。綺麗事ではないからこそ、読みながら何度も立ち止まってしまいました。

 

仕事の章で思い出したこと

特に印象に残ったのは、仕事について書かれている章だった。

その中で著者は、いわゆる「貧困女子」を扱った本を読んでおくことを勧めています。私はちょうど最近、「東京貧困女子。彼女たちはなぜ躓いたのか。」を読んだばかりだったので、この指摘には強く共感しました。

自分を犠牲にすることが正しいと思い込んでしまう。しかし、それでは結局共倒れになる。

冷静に見れば当然のことだが、人間関係の中にいると、その線引きは意外と難しいです。ときに自分の行動を正当化してしまうが、他人から見れば「自業自得」と映る状況も少なくないのだろうと思います。

 

理屈ではわかっていても

一方で、本書では「職場の人間関係は二次的なもの。仕事の目的は収入を得ること」とも書かれています。

確かに理屈としてはその通りだと思います。

ただ、私自身は過去にモラハラやパワハラによって体調を崩し、休職した経験があり、この部分については完全に同意できるわけでもありません。

仕事はライスワークの場であり、割り切ればよい。そう言われても、1日の大半を過ごす場所である以上、感情を完全に切り離すのは簡単ではありません。

それでも、「舐められてはいけない」という言葉には強く頷きました。世の中には厚かましい人も確かにいる。会社とは、生きるために利用する場所――そうした距離感で関われたら、少しは楽なのかもしれないですよね。

 

人生の先輩からの率直な助言

優しく寄り添うというよりは、人生の先輩が率直に語る現実的な助言。少し厳しく感じる部分もあるが、その率直さがこの本の魅力かなと思います。

自分を守ること、人間関係の距離感をどう取るか。そうしたテーマについて改めて考えさせられる一冊でした。

他の著作も気になるので、機会があれば読んでみたいと思います。

 

 

読書日記#117

『月収』原田ひ香 著

月収4万円から300万円まで。6人の女性の人生とお金のリアル

 

原田ひ香さんの他作品レビュー

読書日記#116

東京貧困女子。彼女たちはなぜ躓いたのか。

書評|見えにくい女性の貧困、その現実を突きつける一冊

 

YouTubeで知り、手に取った一冊

東京貧困女子。は、映画化されたものは観たことがありました。最近、YouTubeで紹介されているのを見て気になり、図書館で借りて読んでみました。
タイトルの強さもあり、読む前から重いテーマであることは想像していましたが、実際にページをめくると、その現実の厳しさに何度も立ち止まりながら読むことになりました。

さまざまな立場の女性たちの証言

本書には、さまざまな境遇の女性たちのインタビューが収録されています。

子ども、女子大生、精神疾患を抱える人、シングルマザー、非正規労働者、パワハラ被害者、高学歴の専業主婦、単身の中高年女性。

一見すると、それぞれまったく異なる人生を歩んできた人たちです。しかし読み進めていくと、どのケースにも「ほんの少しのきっかけ」で生活が崩れていく危うさがあることに気づきます。

特別な人の話ではなく、社会のすぐ隣にある現実として描かれている点が、この本の重みだと感じました。

 

「転落」は突然起きる

特に印象に残ったのは、高学歴で専業主婦だった女性が離婚を機に生活基盤を失い、貧困に転落していく話でした。

また、職場でパワハラを受けながらも無理を重ねて働き続け、体を壊した結果、制度の狭間に落ちてしまうケースにも胸がざわつきました。

どちらも決して特殊な人生ではありません。むしろ「普通に生きてきた人」が、ある瞬間に社会の安全網から外れてしまう怖さが伝わってきます。

 

制度の存在と、その使いづらさ

読んでいて思い出したのは、私自身がブラック企業で心身を壊しかけた経験でした。

結果的には、本当に壊れてしまう前に辞めることができましたが、その後の手続きは決して簡単なものではありませんでした。

たとえば傷病手当金。制度としては存在していても、申請の流れは複雑で、知らなければ辿り着けない部分も多くあります。

また、行政の窓口でも、事務的に処理されてしまうことが多く、必ずしも親身に相談に乗ってもらえるとは限りません。

制度はあるのに、それを使える人と使えない人が生まれてしまう。
その現実の残酷さを、本書を通して改めて感じました。

 

それでも、知ることには意味がある

本書が出版されたのは2019年。
その後、社会はコロナ禍を経験し、格差の問題はさらに複雑になっています。

「幸せとは何か」
「安心して生きるとはどういうことか」

読み終えたあと、そんな問いが静かに残りました。

決して気軽に読める内容ではありませんが、社会の実態を丁寧に掬い上げた記録として、とても意義のある一冊だと思います。

重いテーマではありますが、こうした現実を知ること自体に意味がある――。
そう感じさせてくれる本でした。

 

読書日記#115

『シニア・シンデレラたちのラストクルーズ』保坂祐希 著

豪華客船で描かれる、大人の女性たちの軽やかな再出発

 

新聞の書評欄で気になった一冊

シニア・シンデレラたちのラストクルーズは、新聞の書評欄で紹介されているのを見かけ、興味を持って図書館で借りた作品です。

華やかなタイトルと「ラストクルーズ」という響きに、自然と期待が高まりました。

 

軽やかに進む物語

物語はテンポよく進んでいきます。出来事が小気味よく展開し、読みやすさは抜群です。

その一方で、もう少し人物の心情に深く寄り添う場面があってもよかったかもしれない、と感じる瞬間もありました。

ただ、それは今の私の読書傾向や年代によるものかもしれません。

最近は内面描写をじっくり味わう作品を多く読んでいたため、本作の軽快さが少し物足りなく映ったのだと思います。

 

豪華客船という非日常

本作の大きな魅力は、豪華客船クルーズの舞台設定です。

船内の様子やイベント、乗客たちの空気感など、普段知ることのない世界を垣間見ることができました。

富裕層と庶民という対比も描かれますが、それも含めてエンターテインメントとして楽しむのがよいのかもしれません。

 

3人の女性たちの告白

物語の終盤、3人のシニア女性がそれぞれの事情を語る場面があります。

やや一気に明かされる印象はありましたが、深刻さよりも前向きさが残る描き方でした。

“不幸”といっても物語全体は決して暗くなりすぎず、どこか風通しの良さがあります。

その軽やかさは、本作の個性でしょう。

 

気負わず読める一冊

正直に言えば、強烈な印象が残る作品というよりは、穏やかに楽しめる物語です。

けれど、考え込みすぎずに読める心地よさがあります。

夜のひとときや移動時間に、気分を少し変えたいとき。

そんな場面にはちょうどよい一冊だと感じました。

 

おわりに

『シニア・シンデレラたちのラストクルーズ』は、人生の後半に差しかかった女性たちの再出発を、明るいトーンで描いた物語です。

重厚さを求める読書とは少し違いますが、軽やかに物語の世界を旅したいときに、そっと寄り添ってくれる作品だと思います。

 

 

 

読書日記#114

『そっと静かに』ハン・ガン 著

音楽のように心に沁みる、静謐なエッセイ

 

小説家ハン・ガンが綴るエッセイ

そっと静かには、普段あまりエッセイを読まない私が手に取った一冊です。

これまで何作か小説を読んできたハン・ガンが、エッセイではどのような言葉を紡ぐのか。純粋な興味から、図書館で借りてみました。

 

音楽のように流れる文章

本書は音楽にまつわる内容が中心です。

私は知らなかったのですが、ハン・ガンは作詞作曲も手がけるのだそうです。

ページをめくると、文章そのものが静かな旋律のように響きます。

強く主張するのではなく、余白を大切にしながら、そっと胸に届く言葉たち。

読んでいるあいだ、まるで音のない音楽が流れているかのようでした。

 

公園にて

私はこの本を携えて、公園のベンチで読みました。

うららかな日差し、目の前には光を反射してゆらめく水面。周囲には人がいるのに、不思議と少し遠く感じられる。

ハン・ガンの詩的な文章に没入する時間は、とても豊かでした。

読書という行為が、ここまで静かな体験になるのかと改めて思いました。

 

「書きたいのに書けなかった」時間

この作品を書いた当時、ハン・ガンは「書きたいのに書けなかった」と語っています。

それでも、この本を書くことで何かに守られているような感覚があったのだとか。

その言葉に、私は強く惹かれました。書くことが祈りのようになり、救いになる。

その静かな決意が、文章の奥に息づいているように感じられます。

 

私自身が救われた時間

長いあいだ体調が優れず、出口の見えない時間を過ごしてきました。

けれど今、ようやく光が差し始めています。

そんなタイミングで出会った本書は、ハン・ガン自身を救ってきたであろう言葉で、今度は私をそっと支えてくれました。

没入体験は、遠くへ旅しなくても、読書によって得られる。

ハン・ガンの作品の魅力は、まさにその深い没入にあるのだと思います。

 

おわりに

『そっと静かに』は、静かな水面のように、読む人の内側を映し出します。

心が少し疲れているとき、あるいは言葉を失いかけているときに、そっと開きたい一冊です。

静かな音楽のように、確かに心に残りました。

 

 

 

■ハン・ガン著作の紹介

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読書日記#113

『朱よりも赤く』窪美澄 著

花柳界から尼へ、ひとりの女性の苛烈な半生を描く物語

 

花柳界を生き、尼となった女性

朱よりも赤くは、明治から大正の花柳界を生き抜き、のちに尼となった高岡智照という実在の女性をモデルにした物語です。
ドラマティックな半生は、ひとりの女性の運命という枠を超え、時代そのものの厳しさを映し出します。

 

再び手に取った、窪美澄作品

2、3年前、窪美澄さんの作品を立て続けに読んでいました。久しぶりに図書館で何か読みたいと思い、自然と手が伸びたのが本書でした。

読み応えは十分で、物語としても面白い。それでも正直に言えば、今の自分の気分には少し重たく感じる部分もありました。

 

想像を超える、女性の生きづらさ

芸妓が見受けしてもらうための駆け引き、妻となった後も続く男尊女卑の価値観、そして夫からの暴力。

読んでいて決して心地よい内容ではありません。

けれど、それこそが当時の現実だったのだと思わされます。

今の時代も完全に平等とは言えないにしても、どれほど生きやすくなったのかを、逆説的に感じさせられました。

 

それでも失われない、強さとしなやかさ

過酷な状況のなかでも折れません。

環境に流されるのではなく、その都度、自分の足で立とうとする姿には、尊敬の念を抱きました。
華やかさの裏にある冷酷さ、愛の名のもとに振るわれる暴力。

それらを経てもなお、自らの道を選び直していく姿が印象的です。

 

一視点で描かれる没入感

最近は多視点で描かれる小説を読むことが多かったのですが、本作は主人公の視点に深く寄り添います。

そのぶん、まるで自分がその時代を生きているかのような没入感があります。

しばらくは花柳界を題材にした物語はもう十分かもしれない、と感じるほどの濃密さ。

それでも、一人称に近い距離感で描かれる物語の力を改めて実感しました。

 

おわりに

『朱よりも赤く』は、華やかな世界の裏にある苛烈な現実と、そこを生き抜いた女性の強さを描いた一冊です。

気軽に読める物語ではありませんが、時代の不条理と向き合いながらも、しなやかに生きた女性の姿は深く心に残ります。

重みのある読書を求めるとき、静かに向き合いたい作品です。

 

 

 

窪美澄さんの他作品レビュー

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読書日記#112

『菓子フェスの庭』上田 早夕里 著

甘い情熱が交差する、百貨店とパティスリーの物語

 

気分転換に読む、お菓子の物語

気分転換に、お菓子が登場する物語を読むのが好きです。

図書館の文庫本コーナーでたまたま目に入ったのが、菓子フェスの庭でした。
夜寝る前の15分や、電車での移動時間に少しずつ読み進める。

甘い香りが漂ってくるようなページは、慌ただしい日常からそっと気持ちを離してくれました。

 

食の物語に宿る、人間ドラマ

食にまつわる本には、不思議と人間の本質がにじみます。

本書にも、純文学のような劇的な事件は起こりません。

けれど、誰にでもありそうな日常が丁寧に描かれ、登場人物に自分を重ねやすい。

ささやかな悩みや葛藤、仕事への誇り。静かな積み重ねが、物語をやわらかく支えています。

 

フェスティバルへ向かう、甘い情熱

舞台はフランス菓子店と百貨店。

パティシエや百貨店の社員たちが、菓子フェスティバルに向けて理想の一品を追い求めます。

それぞれの立場で「どうすればお客様に喜んでもらえるか」を真剣に考え、試行錯誤を重ねる姿は眩しい。

華やかなショーケースの裏にある地道な努力が、物語に確かな厚みを与えています。

 

淡い恋心が添える、ほろ苦さ

仕事の情熱と並行して描かれるのが、登場人物たちの一方通行な淡い恋心。

大きく燃え上がるわけではないけれど、どこか甘酸っぱく、菓子のテーマと絶妙に響き合います。

恋もまた、レシピ通りにはいかないもの。その不器用さが、物語にやさしい余韻を残します。

 

読後に広がる、甘い誘惑

お菓子の小説を読むと、不思議と美味しいケーキ屋さんへ足を運びたくなります。

甘いもの好きの私にとっては少し危険で、頻繁には買わないように心がけているのですが、それでも気になる店をチェックしてしまう。

ページを閉じたあと、ショーケースの前に立つ自分の姿を想像している

そんな幸福な誘惑も、本書の魅力のひとつです。

 

おわりに

『菓子フェスの庭』は、甘い世界を舞台にしながら、仕事への誠実さや人との関わりを丁寧に描いた物語です。

大きな事件はなくとも、真剣に何かをつくり上げる姿は、読む人の心をそっと温めてくれます。

忙しい毎日の合間に、ひとくちの甘さのような読書体験を求める方におすすめしたい一冊です。