『桜ハウス』藤堂志津子 著
4人の女性が暮らす家。少し昔の空気が心地よい大人の恋愛小説
20年前の空気感
桜ハウスは、図書館の選書コーナーに置かれていたのを見かけ、特に予備知識もなく手に取った一冊でした。
単行本の刊行は2006年。今からおよそ20年前の作品。
読み始めてまず感じたのは、作品に流れる時間の感覚です。まだスマートフォンはなく、携帯電話はガラケーの時代。現代ほど情報や連絡が瞬時に行き交うわけではなく、どこか時間の流れが緩やかに感じられる。
その空気感が、読んでいてなんとも言えず心地よかったです。
4人の女性の共同生活
物語の舞台は、ひとつ屋根の下で暮らす4人の女性たち。
年齢も職業もそれぞれ違う彼女たちが、同じ家で生活することで、日常の中にさまざまな出来事が生まれていく。
そして、この物語の中心にあるのは恋愛。
誰かが恋をし、誰かが悩み、誰かがまた新しい関係に踏み出す。
読みながら、「ここまで恋愛モードになれるものなのか」と少し驚きました。
もしかすると私自身の感覚の問題かもしれないが、今の時代はどこか生き急ぐような空気があり、恋愛が物語の中心にこれほど自然に存在する作品は、むしろ新鮮に感じられました。
共感できないからこそ面白い
正直に言えば、読んでいて共感しづらいエピソードも少なくなかったです。
「どうしてそうなるのだろう」と思ってしまう場面もあり、ちょっとしたストレスを感じることもありました。
ただ、それは4人の女性の性格や価値観がそれぞれ大きく違うからこそなのだと思います。
誰かの行動に共感できないことが、別の人物の個性を際立たせる。そうした人物同士の違いが、物語の面白さにつながっているように感じます。
さらに、物語の後半に登場する謎めいた初老の男性も印象的でした。物語の中に少し不思議なスパイスを加える存在で、後半の展開をぐっと引き締めています。
ゆったりとした時間
映画でも小説でも、ときどき昔の作品に触れると、当時の空気を思い出すことがあります。
携帯(携帯って言葉も今や使いませんね。)の使い方、日常の距離感、人との関係の作り方。そうした細かな描写の中に、時代の空気が静かに残っています。
『桜ハウス』もまた、そんな読書体験を与えてくれる作品でした。
現代のテンポの速い物語とは少し違う、ゆったりとした時間。あの頃の空気を思い出しながら読む時間も、なかなか悪くなかったです。
そんな気分にさせてくれる小説でした。






