Marron_Creamのブログ

読書記録をメインに、お出かけなど日記風に書き連ねています

読書日記#83

『火花』又吉直樹

〜今さら読んでみたら、心を撃ち抜かれた話〜

図書館でふと手に取った一冊

2015年に芥川賞を受賞し、大きな話題となった又吉直樹さんの小説『火花』。芸人でありながら純文学の世界に飛び込み、多くの読者の心をつかんだこの作品を、今さらながら読んでみました。

きっかけは、図書館の文庫本コーナー。なんとなく棚を眺めていたとき、「あれ? 思ったより薄いな」と感じた一冊が『火花』でした。重厚な文学という印象が強くて、構えてしまっていた自分にとって、意外な“読みやすさ”が手に取るきっかけとなりました。

 

主人公・徳永と破天荒な先輩・神谷

物語は、売れないお笑い芸人・徳永が主人公。彼は、劇場で出会った破天荒な芸人・神谷に惹かれ、弟子のように行動を共にします。そこから二人は、お笑いという厳しくも美しい世界の中で、自分のスタイルや信念と向き合いながら生きていきます。

会話劇が中心で、芸人ならではのテンポ感のあるやり取りが心地よく、スッと物語に入り込めました。一見軽妙だけれど、その奥には深い苦悩や葛藤がにじみ出ていて、読み進めるうちにどんどん心を掴まれていきました。

 

涙を誘う「スパークス」解散ライブ

私が特に心を動かされたのは、徳永が所属するお笑いコンビ「スパークス」が、結成から10年を経て迎える解散ライブのシーン。舞台袖から本番を迎えるまでの描写がリアルで、生々しくて、そして切ない。

必死に生きてきた10年。その時間を「無駄だった」と簡単に切り捨てず、「意味があった」と信じたい。そんな想いが、徳永の心の中でぐるぐると渦を巻く。その気持ちが痛いほど伝わってきて、気づけば涙が止まらなくなっていました。

 

「無謀な挑戦」の先にあるもの

解散ライブの終盤、徳永が自分に語りかける独白が、今でも心に残っています。

「必要がないことを長い時間をかけてやり続けるのは怖いだろう。(中略)リスクだらけの舞台に立ち、常識を覆すことに全力で挑める者だけが漫才師になれるのだ。(中略)この長い月日をかけた無謀な挑戦によって、僕は自分の人生を得たのだと思う。」

この言葉に、自分の仕事や生き方を重ねました。「このままでいいのか?」「何か新しいことに挑戦したいけど、怖い」。そんな思いを抱えていた私の背中を、静かに、でも力強く押してくれた気がします。

 

 

又吉直樹の“人間観察力”に魅了されて

読んでみて驚いたのは、人間の心の機微や、社会との距離感、葛藤をこれほどまでに深く描いているということでした。

又吉さんの作品を読んだのは初めてでしたが、その洞察力と表現力にすっかり魅了されてしまいました。

 

最後に

もし「今さら読むのもなぁ…」と手に取るのをためらっている方がいたら、ぜひ読んでみてください。年齢や環境が変わった“今だからこそ”響く言葉に、きっと出会えると思います。