『ワン・モア』桜木紫乃著
最寄りの図書館では、予約できる本はひとり10冊まで。人気作はなかなか順番が回ってきません。そんなときは、本棚をゆっくり眺めながら気ままに本を探すのが私の楽しみのひとつです。
ある日、ふと目に留まったのが、桜木紫乃さんの『ワン・モア』でした。帯に書かれた「私たちは何のために生きているのか」「『余命申告』を受けた女の心に、心身とつもる想い」という言葉が、今の私の気持ちに静かに響いてきました。
不調な身体と重なる物語のテーマ
今年の夏はとても暑く、体調も思わしくない日々が続いていました。ちょっとした不調が重なり、病院に通うことも多くなって、気分もどこか沈みがち。
もし自分が元気だったら、この本を手に取っていたかどうか分かりません。でも、今の私だからこそ、この物語に強く惹かれたのだと思います。体調を崩すと、健康であることの大切さや、当たり前の日常の尊さをしみじみと感じます。『ワン・モア』は、そんな私に寄り添ってくれるような作品でした。
視点が変わるからこそ見える“生”のかたち
物語は長編ですが、6つの章で構成されており、それぞれに異なる視点から描かれます。主人公とその周囲の人々の心情が丁寧に紡がれていて、一章ごとに違う空気感を味わえるのも魅力のひとつ。
特に印象に残ったのは、重たいテーマであっても決して暗く沈みすぎないところです。病気や暴力、孤独といった現実的な痛みを描きながらも、不思議と「生きること」への温かさがにじんでいます。
北海道の静けさと、桜木紫乃さんらしさ
物語の最初の舞台は、北海道の離島。静かで少し寂しげな風景のなかで描かれる人間模様は、桜木紫乃さんらしい筆致で綴られています。
代表作のひとつである『ホテルローヤル』でもそうでしたが、桜木さんの作品には、淡々とした語り口の中に深い情感があり、読後には心にじんわりと余韻が残ります。『ワン・モア』もまた、そんな彼女の魅力がつまった一冊です。
そっと寄り添うミニチュア・シュナウザー
物語には、一匹のミニチュア・シュナウザーが登場します。このワンちゃんの存在が、作品に優しいぬくもりを添えてくれていて、読みながら何度も癒されました。
実は私自身、ミニチュア・シュナウザーが大好きです。犬を飼いたいと思いながら、会社員というライフスタイルではなかなか踏み出せずにいます。それでも、この物語を読んでいると「やっぱり、ワンちゃんのいる生活っていいな」と心から思いました。
もしかすると、忙しい日々の中で私が求めているのは、ただ静かに寄り添ってくれる存在なのかもしれません。
最後に
『ワン・モア』は、生と死、孤独とつながり、過去と未来、さまざまなテーマが静かに交差する作品です。読む人の心の状態によって、受け取り方も変わると思います。
今の私には、この作品がとても必要でした。優しくて、少し切なくて、でも希望の光がちゃんと差している物語。気になった方は、ぜひページをめくってみてください。
ワンちゃんがそっと、あなたの心にも寄り添ってくれるかもしれません。
